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前回のコラムでは「コマーサーという考え方、あり方」についての考えを紹介させていただきました。完結編となる今回は「ライブコマースのフレームワーク」をお話しします。ぜひご覧ください。
- ライブコマースの定義
- ライブコマースを成功させるための考え方
- コマーサーという考え方、あり方
- ライブコマースのフレームワーク
INDEX
ライブコマースの成功においてフレームワーク活用がカギ

ライブコマースの効率を考えたとき、フレームワークの活用が効果的です。
特に初めてライブコマースをおこなう企業や、実際にやってみたけれど思うように成果が出ていない企業は、ライブコマース運用の「型」や効率的な「手法」を理解するためにも、ライブコマースのフレームワークを確認しておきましょう。
またライブコマースの実施目的によっても進め方が異なります。あらかじめ目的を明確にしておくことが大切です。
▼ライブコマースの目的の例
- コンバージョン
- コミュニティの形成/育成
目的を定めたうえでフレームワークを試すことで、効率よく進めやすくなります。
ライブコマースのフレームワークは「目的」と「内容」に分けて考える

ライブコマースのフレームワークを検討する際には、目的と企画内容に分けて考えるべきです。目的や企画内容によって「どのような施策を打つべきか」「誰を起用すべきか」などが異なります。
▼目的を軸にフレームワークを決める例
- 売上が目的の場合:取り扱う商品への知識や愛情が豊富な「インハウスコマーサー」を起用する
- PRが目的の場合:ある程度採算を度外視し、プロコマーサーやタレントを起用して話題性を出す
またライブコマースの企画を作るとき、構成を練るときなどによっても活用すべきフレームワークは異なります。そのため目的につながる大きなフレームワークを決めてから、企画や内容を考える小さなフレームワークに分けて考えることをおすすめします。
ライブコマースに活用できるフレームワーク4つ

ライブコマースに活用できる4つのフレームワークを紹介します。
- ライブコマースのマトリクス図
- ライブコマースを始めるフレームワーク「3P」
- 内容のフレームワーク「SIRRAS」
- 実施後の分析に活用できる「カスケードモデル」
まずはライブコマースの型を決めたうえで、内容や分析などに落とし込んでいくことが重要です。
【フレームワーク1】ライブコマースのマトリクス図
ライブコマースには大別して4つの型があり、目的やコマーサーによってどの型に属するかがわかります。
- PRにつながる「KOLイベント型」
- 従業員をコマーサーとして起用する「インハウスコミュニティ型」
- 季節や商戦に合わせる「モーメントイベント型」
- コミュニティ形成につながる「コマーサーコラボ継続型」
横にコンバージョンとコミュニティの「目的軸」、縦に外部のプロコマーサーか内部のインハウスコマーサーの「ヒト軸」を設置したマトリクス図です。
【目的1】PRにつながる「KOLイベント型」
KOLイベント型は、タレントやインフルエンサーをプロコマーサーとして起用し、イベントのPRをおもな目的とするライブコマースです。
▼KOLイベント型で期待できる効果
- タレントやインフルエンサーのファンにも視聴してもらえる
- 「タレントのおすすめが欲しい」という購買意欲が高まる
- 「1〜2時間の配信で数百万円の売上を達成」などのPRに使える
一方で、コマーサーが商品や業界に関して深い知識を備えていなければ「ただいるだけ」で印象の薄いライブコマースになる点に注意しなければなりません。またコマーサーのアサイン費用から考えると採算はとれないため、あくまでPR施策として実施しましょう。
【目的2】インハウスコミュニティ型
インハウスコミュニティ型は、従業員がコマーサーの役割を担い、ロイヤルカスタマーづくりがおもな目的のライブコマースです。D2Cブランドでよく見られるライブコマースといえます。
▼インハウスコミュニティ型の特徴
- ショップ店員にファンがつき、店頭での売上向上も期待できる
- プロコマーサーをアサインするよりも、比較的すぐに始めやすい
- インハウスコミュニティ型は増加傾向にあるが、しっかり構築することで市場をリードできる可能性がある
従業員をコマーサーとして抜擢するため、成果を出すまでに時間がかかります。コマーサーとしてのスキル獲得やコミュニティの形成、売上のベースづくりなど、やるべきことが多いからです。
しかし一度インハウスコマーサーとして育成できれば、タレントを起用するより手間やコストを抑えて配信できます。ライブコマースを顧客との新しいタッチポイントとしてとらえ「どのような場にしたいのか」を明確化することが重要です。
【目的3】季節や商戦に合わせる「モーメントイベント型」
モーメントイベント型は、自社の従業員をコマーサーとして起用し、積極的に売上アップを狙うライブコマースです。
▼モーメントイベント型の特徴
- ニーズが高まっている市場に対してコンバージョンしやすい
- 同業他社とタイミングが重なるため、切り口や打ち出し方で差別化する
- 従業員をコマーサーとして育ててから臨む必要がある
特に季節商戦や業界のトレンドなど、ニーズが動く瞬間を見極めてライブコマースを配信しましょう。たとえばチョコレートメーカーであればバレンタイン商戦、アパレル業界であれば季節の変わり目などです。
ただし同業他社も同じタイミングでライブコマースを配信する可能性が高いため、セールや限定品などを切り口にして差別化を図りましょう。
【目的4】コミュニティ形成につながる「コマーサーコラボ継続型」
コマーサーコラボ継続型は、コミュニティの形成をおもな目的としたライブコマースです。自社の商品やブランドに精通しており、相性のよいインフルエンサーをコマーサーとして起用します。
▼コマーサーコラボ継続型の特徴
- 複数回のコラボ配信をおこない、習慣化させる
- インフルエンサー目当ての視聴者が配信のファンになり、コミュニティが形成される
- インフルエンサーは「ブランドへの愛」を持つ人を選定する
あくまでもコミュニティ形成がおもな目的なので、ある一定規模のファンがついていて、ライブコマースを盛り上げられる人物を選ぶことが大切です。インフルエンサーと定期的に打ち合わせをおこない、「一緒に楽しいライブコマースを作り上げる」という想いを共有していきましょう。
補足:1つの目的だけでコマース配信をせず組み合わせることも重要
ライブコマースに取り組む際は、1つの型にこだわらず複数を組み合わせることも重要です。長期的な視点でフレキシブルに型を変えたほうが高い効果を見込めます。
たとえば最終的にインハウスコミュニティ型(インハウスコマーサーがコミュニティ形成を目的にする型)を目指すとしても、PRしやすい「KOLイベント型」や「コマーサーコラボ継続型」を併用するなどです。新規視聴者を一気に獲得しやすくなるので、ライブコマースとしての成長も期待できます。
とはいえ「KOLイベント型」や「コマーサーコラボ継続型」を最初から試してしまうと、ライブコマースを自社のみで進める経験が得られません。仮に集客できたとしても、いざインハウスコマーサーを起用してライブコマースしたときに、視聴者が離れてしまう恐れもあります。
そのためライブコマースを始めたばかりの頃は、下記の流れで実施することをおすすめします。
▼おすすめのライブコマースの流れ
- 最初の2〜3回は、パイロット版としてインハウスコミュニティ型で実施する
- 段取りや配信のコツをつかむ
- グランドオープンとして、KOLイベント型の配信を取り入れる
序盤の視聴者数が少ないうちに「進め方ややり取りのOK・NGパターン」を学んでいきましょう。
【フレームワーク2】ライブコマースを始めるフレームワーク「3P」
ライブコマースをいざ始めるときに役立つフレームワークが「3P」です。
次の3つをバランスよく高めることは、視聴者が楽しめるライブコマースを作り出すのに役立ちます。
▼フレームワークの「3P」
- Platform(プラットフォーム):場
- Player(プレーヤー):人
- Program(プログラム):コンテンツ
たとえば最新プラットフォームを導入して機能をフル活用しても、プレーヤーとプログラムが洗練されていなければ視聴者にささりません。まずは下記の点を明確にしたうえで、マッチするプラットフォームを選ぶことが大切です。
- 顧客との関係をどのように構築していきたいのか
- 商品やブランドが持つ世界観や魅力をどう伝えたいのか
また世界観や魅力の伝え方が定まっていない状態で、タレントやインフルエンサーを起用してもなかなか成功しません。商品愛にあふれる従業員をコマーサーとして採用しましょう。
【フレームワーク3】内容のフレームワーク「SIRRAS」
実際にライブコマースを配信する際、コマーサーがどのように進めるべきかをフレームワークにしたものが「SIRRAS(サイラス)」です。
順番に実践することで、視聴者にとって楽しいライブコマースを配信できます。
項目 | 内容 |
---|---|
Show | ・商品の全体像やディティールをしっかり見せる ・尺は長めに取る |
Image | ・材質や使用感など、実際に使用したイメージを持たせる ・視聴者の購入における判断材料を増やす |
Response | 即座に視聴者の疑問を解決し、要望に応える |
Repeat | 今来たばかりの視聴者のために、必要な情報を繰り返し伝える |
Activate | ・購入を迷っている人の背中を押す一言を言う ・クーポンを配布する |
Share | ・配信終了後にアーカイブへ誘導する ・視聴者へのお礼やキャンペーン情報をSNSに投稿する |
特にResponseは視聴者との双方向コミュニケーションを実現する「ライブコマースにおける要」です。視聴者のコメントを拾い上げ、積極的にコミュニケーションを図りましょう。
たとえば「買います」など強い購買意欲を示した視聴者がいた場合は、名前を読み上げてお礼を伝えることで、購入を後押しできる可能性が高いです。
またコメントがあまりないときは、次のようなことを実施してみましょう。
- 二者択一の簡単な質問を投げかける
- 絵文字の投稿を促す
絵文字でコメントへのハードルを下げることで、視聴者が気軽に感想を言えるようになり、配信に活気が生まれます。
【フレームワーク4】実施後の分析に活用できる「カスケードモデル」
コンバージョンを達成するためには、ひとつずつ数値を積み上げる必要があります。そのために活用できるフレームワークが「カスケードモデル」です。カスケードとは連なった小さな滝のことで、転じて段階的に物事が生じる様子を表します。
たとえばSNSでライブコマースをおこなう場合は、下記のように商品購入までに数値を積み上げていく必要があります。
- SNSのフォロワー数
- ライブコマース告知のクリック率
- ライブコマースの視聴者数
- ECサイトへの訪問数
- 商品購入数
そもそもフォロワー数が少なければ、告知してもライブコマースを視聴する人数は多くありません。またライブコマースの視聴者数が多くても、ライブコマースで魅力的に商品紹介できなければECサイトを訪問してもらえません。
このように商品購入などのゴールから段階的に分けて数値を見ていくことで、何を改善すればいいのかわかりやすくなります。
まとめ:フレームワークを活用して効果の高い配信をしよう

ライブコマースで成果を得るには、フレームワークの活用が有効です。
まずはどのようなライブコマースを実施するのか「マトリクス図」で方向性を決めましょう。次に「3P」でプラットフォームやコマーサーなど具体的な要素を明確にします。
配信時は「SIRRAS」を意識し、配信後は「カスケードモデル」を活用して分析することで改善し続ける理想のライブコマースに近づくことができます。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。
ライブコマースの最前線に目を向けると、売るための手段からマーケティング活動やファンミュニケーションの手段へと変化の兆しがあります。中長期のマーケティング視点で取り組むとは、まさにそのようなものを意識した姿勢を意味します。
「ライブコマースの定義」「ライブコマースを成功させるための考え方」「コマーサーという考え方、あり方」「ライブコマースのフレームワーク」の全4回に分けてお届けした本コラムもいったん完結です。より良いライブコマース実現の参考になれば幸いです。
ライブコマースの進化とともに、これら知見もアップデートしていきますので次回の更新にご期待ください!
編著:Tigライブコマースラボ
Tigライブコマースラボとは パロニム・カスタマーサクセス部門および社内外の有識者を交え「ライブコマースのあり方」を研究しベストプラクティスを生み出すプロジェクト。 |
【参考文献】成果を上げるライブコマースの教科書
【参考リンク】ライブコマース運用についての相談・支援が可能な企業
アイレップ TEAM JAZZ:科学するライブコマース