コマーサーという考え方、あり方:理想の売り手は誰なのか?

いつも「ぱろにずむ」をご覧いただきありがとうございます。

前回のコラムでは「ライブコマースを成功させるための考え方」についての考えを紹介させていただきました。今回は「コマーサーという考え方、あり方」をお話しします。ぜひご覧ください。

  1. ライブコマースの定義
  2. ライブコマースを成功させるための考え方
  3. コマーサーという考え方、あり方
  4. ライブコマースのフレームワーク

コマーサーとは

「コマーサー」とひとくちに言っても、実はライブコマース運営者ごとにその捉え方は千差万別で、その役割や特性は大きく変わってきます。ここでは、われわれが考えるコマーサーとはなにかといった定義や捉え方を解説します。

  1. コマーサーの概要や役割
  2. コマーサーとライバーの違い
  3. コマーサーとYouTuber、インスタグラマー、TikTokerの違い

それぞれの違いを理解することで、キャスティングや育成の方向性が明確になります。

コマーサーはライブコマースの演者として商品を紹介する人

コマーサーとは、ライブコマースに出演し商品を紹介・販売する人のことです。そもそも「コマース(commerce)」は「取引」を意味するため、動画を通じた取引を取り持つ人と言い換えられます。

ライブコマースは比較的新しい販売方法なので、コマーサーの呼び方やあり方も統一されているわけではなく、プラットフォームやブランドによって違いがあります。たとえば「コマーサー」「ライブコマーサー」「コマースライバー」などです。

コマーサーとライバーには、その名称だけでなく役割や特性にも明確な違いがあると考えています。

コマーサーとライバーの違い

ライバーとは、ライブ配信アプリを使用して日々ライブ動画を配信している人です。ライブ配信の視聴者はコメントや投げ銭などでライバーを応援し、ライバーはそれに応えるかたちでコミュニケーションを取ります。

コマーサーとライバーの違いを、表にまとめました。

配信者重視される要素配信における主役
コマーサー・商品に対する知識
・商品の開発秘話
・実際に使ったうえでのおすすめの使い方
・商品
ライバー・視聴者との関係性・ライバー自身

ライバーは「ライバー自身」が主役であるため、投げ銭型コマースは得意ですが、商品の紹介となるとうまくいかないケースもあります。

一方、コマーサーの役割は「商品」の魅力を伝えて、売上につなげることです。視聴者とやり取りする際も、商品の機能や使い方をイメージしてもらうためのトーク力が欠かせません。

  • ライバー:「人」に焦点をあてた配信
  • コマーサー:「モノ」に焦点をあてた配信

とまとめられます。

なお、こちらの記事ではライブコマースの定義に触れているので「ライブコマースとは」から理解したい方は、ぜひご一読ください。

コマーサーとYouTuber、​​インスタグラマー、TikTokerの違い

YouTuberやインスタグラマー、TikTokerとの大きな違いは、視聴者との関係性にあります。

配信者配信者から提供するもの視聴者との関係
コマーサー商品双方向
インスタグラマー情報配信者→フォロワーへの一方向
YouTuberTikToker企画・エンターテインメント
(おもにライブではなく完成された動画)
配信者→視聴者への一方向

インスタグラマーはフォロワーに対し、一方向的に情報を提供します。コメント欄でやり取りはできるものの、直接コミュニケーションを取ることは多くありません。

また、YouTubeやTikTokにはライブ配信機能もありますが、コメントは感想の意味合いが強く「対話」を前提とした双方向のコミュニケーションからは少し距離があると考えられます。

このように他の配信者とコマーサーとの大きな違いは、いずれも「視聴者との対話」に重きを置かれていない点です。

それでも「他の配信者との違いはわかったけど、具体的にどのようなスキルが求められるのだろう」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。続いて、コマーサーに必要なスキルや向いている人の特徴について紹介していきますのでぜひご参考にしてください。

コマーサーに求められるスキル・向いている人の特徴

コマーサーに求められるスキルは、4つあります。

スキル具体的なアクション
営業マンのセールストーク相手の立場に立って物事を考え、問題の解決につながる提案ができる
商品開発者の商品知識商品の詳しい知識と深い愛をあわせ持ち、わかりやすく伝えられる
SNS運用担当のマーケティング知識視聴者が再来訪するような配信やアーカイブ視聴での商品購入へつなげられる

例:コメントを読み上げる際に、視聴者の名前を呼ぶ
配信者としての配信慣れと臨機応変に対応する力予想していない状態になっても、うまく軌道修正しながら配信を進められる
参考:成果を上げるライブコマースの教科書

コマーサーには商品の開発秘話や機能を語れる知識だけではなく、商品への愛情が欠かせません。「なぜその商品をおすすめできるのか」「コマーサー自身はなぜ好きなのか」などを紹介することで、視聴者の心を引き寄せてアクションを起こしてもらいやすくなります。

また「配信者としての配信慣れと臨機応変に対応する力」があれば、視聴者のコメントや流れにあわせて、軌道修正しながら配信を進められます。

たとえば、あるコメントを拾って「みなさんはどうですか?」と問いかけるなど、DJのように話をつなげていく力が必要です。したがって、このような人がコマーサーに向いています。

▼コマーサーに向いている人の特徴

  • 商品に対して思い入れや愛がある人
  • 商品の魅力を自分のキャラクターで伝えられる人
  • 商品に興味を持ってもらえるような話し方ができる人
  • 物怖じせずにどんな状況でもしっかり対話ができる人

コマーサーはどのように選定すべきか

結論から言うと、社内でコマーサーに適した人を選出・育成することをおすすめします。

そもそもコマーサーには、プロコマーサー(外部に依頼)とインハウスコマーサー(社内スタッフに依頼)の2パターンがあります。

コマーサーの種類特徴
プロコマーサー・ユーザー視点で商品を紹介できる
・ライブコマースやSNSに慣れているためスキルが高い
・都度キャスティング費用がかかる
インハウスコマーサー・開発者視点・店舗スタッフの視点で、裏話などもできる
・追加の費用をかけずに始めやすく継続しやすい
・ライブコマースに慣れていないため、視聴者とのコミュニケーションをうまく取れるまでに時間がかかる
参考:成果を上げるライブコマースの教科書

PRなどで視聴者に大きくリーチしたい場合は、プロコマーサーに依頼するのもひとつの方法です。

しかし視聴者を見込み顧客として育てることを目的に、複数回を前提としたライブコマースをおこなう場合は、インハウスコマーサーをおすすめします。インハウスコマーサーであれば商品知識があるうえ、コストを抑えてライブコマースを実施できます。

第一に1回のライブコマースだけで期待するような成果を出すことには無理があります。ライブコマースをおこなうたびにプロコマーサーに依頼すると費用がかかるため、長期目線で考えるとインハウスコマーサーの育成が現実的であり重要になってきます。

コマーサーの育成はどのように進めるべきか

インハウスコマーサーを育成する際は、このような流れで試してみるのがよいでしょう。

  1. コマーサー育成の専門家を探す
  2. 社内でライブコマースのロープレをおこなう
  3. 慣れてきたらコマーサーのマニュアルを作る
  4. 補足:コマーサーの評価基準を考慮することも重要

特にコマーサーを1人育成したあとは、マニュアルで横展開して複数人を育成することが欠かせません。

【ステップ1】コマーサー育成の専門家を探す

育成のノウハウがないうちは、コマーサー育成の専門家に相談しましょう。ライブコマースは立ち上げ段階から失敗しない人材を選び、戦略的に取り組むことが重要です。

もし最初のライブコマースに訪問した人が「つまらない」と感じた場合、再訪してもらえなかったり、SNSでネガティブな感想が拡散されたりする恐れがあります。

専門性のある支援企業なら短期集中でノウハウを教われるので、スキルを吸収して育成をインハウス化することが可能です。たとえば研修中は自分ごと化していくため下記のポイントを押さえておきましょう。

▼研修で押さえておくべきことの例

  • カメラに向かって配信するときの注意点や進め方のコツ
  • テーマの企画方法
  • 自分のエピソードの盛り込み方

自社のブランドイメージを損ねないためにも、まずはひとつひとつを実践できるようにしていくことが大切です。

【ステップ2】社内でライブコマースのロープレをおこなう

コマーサーの育成が進んだら、社内でライブコマースのロールプレイング(本番を想定した予行演習)をおこないましょう。

研修で学んだことをいきなり本番で試した場合、緊張して一方通行の話し方になったり、視聴者のリアクションを見落としたりする恐れがあります。ライブコマースは動画と違って編集できないため、対話を意識しつつ些細な言動にも注意を払うことが大切です。

ロールプレイングではたとえば、ターゲット層に近い年齢の社員を招くなど本番に近い環境で、リアルな感想や質問をコメントしてもらいましょう。配信後には、「購入したい」「楽しい」などの感情が湧いたかどうかをヒアリングすることも欠かせません。

あわせてアーカイブを見直し、商品の見せ方や光のあて方、立ち位置などに問題がないかチェックしましょう。

【ステップ3】慣れてきたらコマーサーのマニュアルを作る

コマーサー育成のノウハウが整ってきたら、育成のマニュアルを作りましょう。コマーサーが1人しかいないとバリエーションに富んだ配信が難しいうえ、トラブルなどがあった際に配信自体ができなくなります。

マニュアルを作成するときは、最初に育成したコマーサーにヒアリングしながら詰めていきましょう。

▼ヒアリングする内容の例

  • SNSアカウントのフォロワーへの告知方法
  • コメントが盛り上がる話し方や返答の仕方
  • 視聴者に好まれる商品の傾向
  • 効果的だった企画の傾向

また、カスタマーサポートに寄せられた顧客の声や問い合わせを共有してもらい「○○というコメントがきた場合はこう返す」と盛り込んでいくことをおすすめします。

補足:コマーサーの評価基準を考慮することも重要

コマーサーとして自社の従業員に活躍してもらううえで、新しい評価基準を考慮することも重要です。

インハウスコマーサーは従業員であるため、基本的に通常の業務をこなしながらコマーサー業務をおこないます。負担が増えるぶん給与や評価に影響がなければ、高いモチベーションを保つことは困難です。

そのため下記のような評価基準を取り入れ、コマーサーのモチベーションを上げていきましょう。

▼評価基準の例

  • ライブコマース経由で発生した売上(コマーサーとしての売上)
  • ライブコマース経由で公式サイトへ訪れた人の数(間接的な影響)
  • ライブコマース経由で得られたポジティブな意見の数(好感形成)

売上だけではなく、「公式サイトへの訪問者数」「レビューの増加」といった間接的な影響も基準にすることがポイントです。訪問者数が増えるほどコマーサーがやりがいを感じ、ライブコマースに活き活きと取り組んでもらいやすくなります。

まとめ:コマーサーのあり方を把握し、ユーザーに楽しさを提供しよう

コマーサーはいわゆるライバーやYouTuberと違い、「商品」を主軸においた新しい配信者のあり方です。商品への愛や知識はもちろん、視聴者の反応や状況にあわせて臨機応変に対応できるスキルも求められます。

まずは専門知見を持った支援企業からノウハウを学び、社内でロールプレイングをおこなって進め方を習得していきましょう。慣れてきたらマニュアル化し、継続的にライブコマースを開催できる体制を作ることが重要です。

関わる人全員が楽しめる配信を心がけることで視聴者のファン化が進み、ひいては売上につながります。

そんな理想的なライブコマースを実現するためにもコマーサーの存在はとても大きなものになります。ぜひ、この記事を参考にコマーサーの育成について考えていただけたら幸いです。

今回も最後までご覧いただきましてありがとうございます。
本コラムでは、われわれが考える「コマーサーという考え方、あり方」についてお届けいたしました。
次回は完結編となる「ライブコマースのフレームワーク」についてお届けします。
ぜひご覧ください。

編著:Tigライブコマースラボ

Tigライブコマースラボとは
パロニム・カスタマーサクセス部門および社内外の有識者を交え「ライブコマースのあり方」を研究しベストプラクティスを生み出すプロジェクト。

【参考リンク】コマーサーについての相談・支援が可能な企業
アイレップ TEAM JAZZ:科学するライブコマース

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