ライブコマースは「売れる魔法」?
ここ数年にわたり、日本でも世界でも注目されているライブコマース。
特にコロナ禍で人々の消費行動が一気にデジタルへ移行したことを受け、参入する企業が増加しています。しかし、まだまだ誰もが活用する購入方法というわけではなく、検討中の企業側もそのやり方を模索している状態と言えるでしょう。
こうしたWebを活用した新たな販売方法が出てきたとき、必ずと言っていいほど耳にするのが、「これを実行すれば必ず売れる!事業が成功する!」という甘いささやき。必ず売れる魔法があれば喜ばしいかもしれませんが……そう一筋縄にはいかないのが現実です。
今このコラムをご覧になっている皆さんの中にも「実際にライブコマースをやってみたものの、うまくいかず困っている」という方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、ライブコマースサービスを展開しているわれわれパロニム株式会社が蓄積してきた知見をもとに、企業が実施するライブコマースを成功に導くために絶対欠かせない心構えをお伝えします。きちんと体制を整え、具体的な戦略を立てて実行し続ければ、怖いものなし。魔法ではなく、着実に成果を出す戦略を学んでいきましょう。
INDEX
【POINT #01】いつも「消費者目線」は忘れずに

実際、ライブコマースで買ったことある?
まず根幹に据えておきたい大前提。それは「消費者としての目線」を持つことです。実際に、あなたはライブコマースで商品を買ったことはありますか?最近オンラインで何を購入しましたか?
モノを買うとき、どのように情報を受け取り、どう考えて行動し、購入に至るのか。
そのフローを自分自身の行動に当てはめて考えることを意識しましょう。
これは、売る側として自社ブランドや商品のことを考えれば考えるほど忘れてしまいやすいポイント。常に「自分も消費者の一人である」という前提を念頭に置きながら、消費者行動をどうコントロールしていくかを考えていくことが大切です。
【POINT #02】ライブコマースの3スタイルをチェック

混在すると大変!実はライブコマースには分類がある
ひとくちに「ライブコマース」と言っても、実は3つのスタイルが存在します。
今自分が実施している、または実施を検討しているライブコマースはどれにあてはまるのかを理解しておきましょう。
- 1つめは「ブランドコマース」
自社のブランドや商品を持ち、社内人材をベースにライブコマースを展開していくパターンです。アパレルブランドや家具メーカーなどが、自社商品の販売や消費者とのコミュニケーションを図るチャネルとして用いている例がこのスタイルにあたります。
- 2つめは「ファンコマース」
すでにファンがついているタレントやインフルエンサーが、自身のファンコミュニティに対してブランドや商品を紹介していくものです。
人の熱量を売上に変えていくスタイルで、企画構成としてはタレントが出演して商品をオススメするTV番組がイメージに近いかもしれません。
- 3つめは「せどりコマース」
個人が仕入れた商品の販売チャネルとしてライブ配信を活用しているものです。
企業が自社ブランドや商品のために展開するライブコマースとはプラットフォームが違うため、上記2つのスタイルとは毛色の異なるものだと言えるでしょう。
では、企業が取り入れるべきスタイルとは?
ライブコマースと聞くと「ライブ配信中に売上を上げていく短期決戦型の販売方法」だとイメージしていたかもしれません。
しかし企業が取り入れるものとしては、広範囲かつ中長期的に目線を広げた「ブランドコマース」が主たるスタイルになると考えています。
インハウス人材の動きがベースになるのでタレントをキャスティングするより回数を重ねやすく、関係構築に多くの労力と時間を費やせるのがブランドコマースの一つの特徴。
回ごとに内容の強弱をつくりやすいのも大きなメリットと言えるでしょう。
【POINT #03】ライブコマースの目的を明確に

「売る」だけじゃない!マーケティング戦略から考えるべき目的って?
ライブコマースの導入を検討するとき、最初に定めるべきはその「目的」。
顧客のエンゲージメントを高めたいのか、それとも直接的にECの売上をUPさせたいのか……該当事業のマーケティング戦略において、ライブコマースがどの役割を担うのかを明確化する必要があります。
たとえば「ライブコマース単発でとにかく多くの商品を売ること」が目的なら、安い商品を見せて次々と売っていく企画になるでしょう。
一方、「ブランドと視聴者との関係性を深めること」を目的に置いた場合、視聴者とコミュニケーションをとりながら店内をぐるぐると見てまわり、そこで目に付いた商品を順に紹介していくといった企画が考えられます。
過去に、商品を紹介するのではなく「コマーサー(配信者)とお話をしよう!」という、コミュニケーションをとることを主目的に配信をした事例もありました。
まさに、ライブコマースに「商品を売る」という目的を持たせるのではなく、「距離を縮め関係性を高める」という役割を担わせるマーケティング戦略パターンです。
つまり実施目的を定めることは、「どんな企画を実行すべきか」「KPIに何を設定すべきか」を決めるための根幹のステップ。
曖昧なままで進めてしまうと、今後必ず迷子になってしまいます。
目的をストーリーとして言語化すれば、次のアクションが具体的に!
マーケティングの観点を軸に「何のためにライブコマースをするのか?」が見えてきたら、今度は具体的な言葉に落とし込んでいきましょう。
このときのポイントは、ただ「売上金額を上げる」という抽象的な目的・目標を掲げるのではなく、「このような人と、こんな関係性をつくっていきながら、こういった売上を獲得していくライブコマースにする」ともう一歩踏み込んだストーリーを描くこと。
ここまで具体化すれば、起用すべきコマーサー像や的確で論理的な企画構成が設定でき、社内外への説明もしやすくなります。
【POINT #04】商品選定と導くべきフローはしっかり検討を

何でもは売れない!?ライブコマース向きの商品って?
仮に「商品を売ること」を目的とした場合、ライブコマースで販売する「商品の選定」も企画設計のポイントとなります。実は同じブランドの商品であっても、ライブコマース向きのものとそうでないものがあるのです。
その基準の一つが「価格帯」。
実際に自分がオンラインで購入するときのことを思い浮かべてみてください。
たとえばインテリア製品ブランドの場合。1000円程度のキッチングッズであれば、比較的すぐその場で購入に至りやすいでしょう。
もし失敗しても諦めがつきやすい価格と言えるかもしれません。
一方、10万円の家具だとどうでしょうか。
いくらライブコマースで魅力的に感じられても、その場ですぐ購入を決断する方は少ないと考えられます。それなりの価格だからこそ失敗はしたくない、実物を確認できないままでは買いたくないという気持ちがより強くなりますよね。
もちろん商品の特性やマーケットの状況、顧客一人ひとりとの信頼関係などによって違いはありますが、価格帯が一つの基準として捉えられるというのはおおむね間違いなさそうです。
では、高い商品はどう扱うべき?
とはいえ、「この価格帯以上の商品は絶対売れない、というわけではない」のがライブコマースを用いた商品販売の面白いところ。
ライブコマースで魅力的に感じた商品は、他のサイトやSNSで口コミを調べる、店舗へ足を運んで実物を見るなど、手間と時間をかけて決断に至る場合も多いのではないでしょうか。
つまり、ライブコマースを入口として商品・ブランドの興味喚起や店舗誘引ができれば、最終的に店舗やECで売上を上げることができます。
ここで考えるべきは「ライブコマースでどこまでの役割を担うか」なのです。
「視聴者が想定しているものと実物のサイズ感、ギャップはライブ配信で埋めておいて、手触りや細かな色合いは店舗で確かめてもらえばいい」といったように、役割を店舗とライブコマースで分担しておく。
はたまたライブコマースを出口(=最終決定の場)として捉えてもらうやり方も考えられるでしょう。
【POINT #05】ライブコマース以外の土台も整えて

リアル店舗やECの状態、バッチリ?
ここまでお伝えしてきた通り、商品を買ってもらうこともブランドを好きになってもらうことも、ライブコマース単体だけでは残念ながら叶えるのが難しいのが現状です。
だからこそ土台として重要になるのが、リアル店舗やECなどの販売する地盤がきちんと築かれているかどうか。
顧客を受け入れる場が整えられていない限り、ライブコマースから送客したときの受け皿として機能せず、見込み客をみすみす逃してしまうことになってしまいます。
この土台はつくれていて次の手を模索している状態であれば、ライブコマースに取り組む良いタイミングであると言えるでしょう。
ライブコマースに顧客を呼び込むのは、SNS!
また、SNS施策でファンの取り込みができているかどうかもポイントになります。
ライブコマースはあくまでもソーシャルコマースの延長上にあるもの。SNSがなければライブコマースが成立しないと言えます。
さらにSNSが集客源の大部分を占めますが、フォロワー全員がライブコマースを見てくれるわけではありません。実際にはその数%しか視聴者にならないと考えるのが賢明です。
したがって、SNSである程度のファンを獲得できていない状態では、ライブコマースの視聴者獲得は見込めません。
【POINT #06】ステークホルダーを巻き込もう

どんどん巻き込もう!自分だけでやろうとしていない?
先述の通り、ライブコマースへ視聴者を連れてくるにはSNSが、そしてライブコマースで関係を持った顧客を出口まで連れていくにはリアル店舗やECが大きな鍵となります。
つまり、こうした土台づくりに「関与する部署や担当者を巻き込むこと」は必要不可欠。ライブコマースに取り組むからには、こうした関係者としっかりチームを組みましょう。
またパロニムでは、日々さまざまな企業の商品担当者やEC担当者の方からライブコマースのお問い合わせをいただいていますが……その方々の多くは、マーケティングを担当する部署とあまり連携していません。
KPIを考えている部署と切り離して動こうとしてしまっているのです。
この状態でのライブコマース運用は、いわば「いばらの道」。マーケティングの部署と協力して中長期的なマーケティング視点を持ちながらプロジェクトを進めていくのが理想です。
【POINT #07】継続しながらKPI設定&模索を

目的に合わせてKPIを模索していこう!(資料配布あり)
本コラムでは、ライブコマースを始めるにあたっての心構えや基本となる考え方などについてお届けしてきました。
これからライブコマースの導入を検討している方、新たな施策を模索している方のスタートラインとしてお役に立てていたら幸いです。
また、主たる題目として「目的設定の重要性」をお伝えしてきましたが、目的の内容によっては設定すべきKPIは異なってきます。その具体的なノウハウやフレームワークは、第2弾「ライブコマースを成功させるKPI設計の考え方」として資料にまとめました。以下のバナーよりダウンロードして、続きもご覧ください。
しっかりポイントを押さえれば、ライブコマースで成果を上げることは可能です。ぜひ最大の効果を上げるため、一緒に新たなライブコマースの道を切り拓いていきましょう。
編著:Tigライブコマースラボ
Tigライブコマースラボとは パロニム・カスタマーサクセス部門および社内外の有識者を交え「ライブコマースのあり方」を研究しベストプラクティスを生み出すプロジェクト。 |