インタラクティブ動画/ライブ配信サービスを提供するパロニム株式会社でも話題のChatGPTをはじめとしたAI技術に関心の目を向けています。
今回は、そんなパロニムでTigテクノロジーの中核を担う3人の技術者に「AI×ライブコマース」をテーマに尋ねました。AI技術をライブコマースでどう活用するのか、最新テクノロジーを駆使した動画サービスの姿とは、このような観点からパロニムの技術者ならではの考えをお届けします。
▼今回の登場人物 CTO(最高技術責任者):大竹 プロダクト企画部長:遊佐 エンジニア:佐藤 |
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そもそもChatGPTとは

ChatGPTとは、AI技術を活用した対話型のサービスです。人工知能を研究する非営利団体「OpenAI」によって開発されました。
ChatGPTは、質疑応答だけではなく、テキストの翻訳や小説の自動生成などあらゆる活用が可能です。そこで、試しにChatGPTへ「ライブコマースとは何か」尋ねてみたところ、下記の回答がありました。

このように、素早い回答ができることもChatGPTの特徴です。では、近年急速に進化するChatGPTのようなAI技術をどう捉えるべきか、ライブコマースの分野でどう活用していくのか。ここからは、技術者たちによる当日の模様をご覧ください。
ChatGPTは「いかに情報を引き出すか」のスキルが求められる

大竹:ChatGPTは、文章を投げると質問に回答したり自然な文章を生成したりと、従来のチャットサービスと比較して段違いのクオリティで文章のやり取りができる革新的なツールです。特に、API提供も始まって誰でも利用できるようになったことが大きく、今後あらゆる業界で業務の進め方に大きな変化をもたらし得る存在だろうと見ています。
私も日々の業務でChatGPTを試しています。これまで慣れない分野の開発でつまづいたときにはGoogleで検索して答えを探していましたが、ChatGPTに質問すると、検索時のように適切な答えを探すまでもなく即座に答えが返ってきます。一方で、ChatGPTが誤った回答をすることもあるため「出してきた答えが正確な情報であるか」を自身で確認する作業も欠かせません。そもそもChatGPTは、膨大な学習データのなかから確率的にもっともらしい回答を出す仕組みになっています。そのなかで誤った回答を出すのは、ある意味仕方のないことです。
また、漠然と質問すると漠然とした回答が返ってくるため、深掘りする作業も必要ですね。これまでGoogle検索する際も「検索力」がある人とない人とではたどり着ける情報に差が生じていました。ChatGPTのようなツールを利用する際も同じようなことが起こると思います。ChatGPTは、いかに正確な情報を引き出すかなどのスキルが必要と感じています。
パロニムの『Tig』は発信者が考える正しい情報へ誰でも平等にたどり着ける

遊佐:私も大竹さんの意見に同感です。ChatGPTが素晴らしいツールであることは間違いありません。一方で、情報を引き出すスキルが求められるため、すべての人がうまく扱えるとは限らない。また、ChatGPTはもっともらしい回答をしてくれますが、その回答が正しいとは限りません。
この部分は、我々が提供する『Tig』の世界観にどう落とし込むか難しいところがあります。
▼『Tig』とは パロニムが提供するインタラクティブ動画サービスのコア技術。動画内に任意のタッチポイント(導線)を設置したりストーリー分岐ができたりと、従来の動画とは異なる特別な視聴体験(インタラクティブ動画体験)を提供できる。 インタラクティブ動画に特化したTig Video、インタラクティブライブ配信に特化したTig LIVEなど、Tig技術から各種サービスを展開している。 |
『Tig』の世界観で大切にしているのは、「正確性」と「平等性」の2点です。発信者側が考える正しい情報(公式の情報)へ、誰でも平等にたどり着けるのが『Tig』の魅力だと思っています。
たとえば、アパレル企業のライブコマース映像をみた視聴者のなかには、「この服の詳細情報を知ってから買いたい!」と考える人もいるはずです。しかし、ライブコマースで紹介され気になった商品も、詳細情報をみるための導線がない場合は、Googleなどで検索する必要があります。
このとき、検索力がなければ、動画視聴後に本来知りたかった情報へたどり着けず、興味を持った衣服の購入を途中で諦めるかもしれません。一方で、『Tig』の場合は発信者側が「視聴者が求めるページへの導線」を動画内に設置できるため、視聴者は気になった衣服をタッチするだけで詳細ページへとジャンプできます。
つまり、従来は動画視聴後に自分で製品・サービスについて調べる必要がありましたが、『Tig』の場合は視聴者が検索する手間を省けるわけです。すると、検索力がある人もない人も平等に発信者側が考える正しい情報(公式の情報)へたどり着けます。

▲『Tig』は映像内で気になった部分に触るだけで知りたい情報にたどり着ける技術
さて、話題をChatGPTに戻します。「正確性・平等性」といった『Tig』ならではの世界観があるなかで、今後ChatGPTをどう理解して利用していくのか、我々技術者もしっかり考えていく必要があります。
AIツールを我々のサービスに実装する際は「正確性・平等性」の部分を強化できるのかの見極めが重要になりますから。
ChatGPTは操作方法こそ簡単ですが、
- 正確な回答を導き出す質問の仕方
- 回答内容が正しいか判断するスキル
などが求められるので、Tigの世界観で大切にしている「万人が正確な情報にたどり着く」という点で難しい側面もあると思っています。したがって、現時点でChatGPTをサービスに実装するまでには至っていません。
『Tig LIVE』でもAI技術を活用した実験をおこなっている

佐藤:私もお二方の意見に同感です。今後、ChatGPTのようなAIツールを動画サービスにどう組み込んでいくのか、あらゆるツールを試しながら模索していきたいですね。
実は現在進行系で「TigでAI技術を活用する取り組み」を加速させようとしています。
たとえば「画像AI生成」を活用して動画を補完する支援的な要素とか、「音声認識モデル」を活用して音声の文字起こしをしてもらうとかです。
実際に、パロニムのライブソリューション『Tig LIVE』では、翻訳や文字起こしのためにAI技術を取り入れる実験をしています。ライブ動画で出てくる会話を文字起こしし、翻訳してから字幕をつけてアーカイブ配信することで、海外の人でも動画を視聴できるようになるなど補助的な役割です。今後さらに実験を重ねつつ、AI技術を取り入れたライブソリューションを正式リリースできるように努めてまいります。
大竹:AI技術を取り入れたライブソリューションは、越境ECに取り組んでいる企業にもおすすめできますね。字幕がついたライブコマースの動画をアーカイブ配信することで、海外に住む多くの人に自社製品をPRできますから。
遊佐:AI技術で字幕をつける機能は、聴覚障がいを持った人にも有益です。ここは、『Tig』が大切にしている「平等性」の部分にも関わってきます。正式リリースできる段階まで精度を高め、早くみなさんに「AI技術を取り入れたTig LIVE」をお披露目したいですね。
今後は動画制作を楽にする技術としてAIを活用していきたい

大竹:今後は、AIに「コンテンツ制作のアドバイザー」的な役割も担ってもらいたいと思っています。たとえば、動画をAIが画像解析して「ここにタッチポイント(導線)をつけると良いですよ」とアドバイスしたり、勝手にAIがタッチポイントをつけたりという具合です。ゆくゆくは「こういう動画を作ってほしい」とAIに依頼したら制作してもらえる未来もやってくると思います。
我々も、Tig動画を制作するのが楽になる技術としてAIを活用していきたい。あとは、データ解析にもAIを活用し、動画を制作する企業がより動画の効果を高められるようにしたいですね。
パロニムでは、進化していくAI技術を今後も積極的に採用していく予定です。