ショート動画”なし”はありえない!企業が有効活用する方法とは?

ここ5年ほどの間で、瞬く間に市民権を得た「ショート動画(縦型ショート動画)」。特に若年層を中心に注目を集め、毎日さまざまな短尺動画が発信されています。

こうした若年層を中心に注目を集め続けるショート動画の流行は、今後も加速していくのでしょうか。さらに企業側が販促や広報、PRなどの目的で活用するなら、どのような手法が考えられるのでしょうか。このヒントを得るため、今回はパロニム株式会社 プロダクト&ソリューション本部長 綿引に話を聞きました!

今回答えてくれた人
P&S本部長綿引
プロダクト&ソリューション本部長 綿引紀教
Tigプロダクトやサービスの企画部門を統括。
VPoEとして技術部門マネジメントもおこなう。

01.動画シーンを席巻!ショート動画の歴史と現状

「ショート動画」とは、画面比率9:16の縦動画を軸とした発信方法のひとつ。コミュニケーションツールとして世界中の人が活用しています。

このショート動画を流行の渦に巻き込んだのが、中国発のアプリ「TikTok」です。それまでも短尺の動画を投稿するようなサービスやアプリはありましたが、中でもTikTokはアプリリリース後にすさまじいスピードでユーザー数を獲得し、ショート動画シーンに新たなムーブメントを巻き起こしました。日本においては、リリース翌年の2018年に新語・流行語大賞にノミネートを果たすまで認知を獲得しています。

その後、Instagram(リール)やYouTube (YouTubeショート)が後を追うようにショート動画機能を相次いでリリース。2023年2月には、日本でもYouTubeショートでの収益化がはじまり、注目度はさらに高まっています。

YouTube ショートにおける月間投稿本数推移。たった2年間で約10倍にまで増加している。(出典元:https://kamuitracker.com/blog/archives/17635

上記グラフからもわかるように、投稿本数は着々と増加しています。今後もこの傾向は続き、それに伴い視聴者数も右肩上がりが継続すると予想しています。ライブ配信の台頭や長尺化の流れもありますが、まだまだピークには到達していなさそうです。

02.なぜ今、ショート動画が流行っている?

ここ数年間ショート動画が流行しているのは、一体なぜなのでしょうか?今回は、5つの観点から考察していきます。

デバイスとインフラの普及

まず前提として挙げられるのが、「動画を視聴するデバイスもインフラも整っている」ということ。今やほどんどの人が動画を再生・撮影できるスペックのスマートフォンを所有しています。PCよりもスマホを積極的に活用する人も増え、スマホで動画を見る際も年齢が若くなるにつれ端末を縦にした状態で視聴する傾向が見られるようになりました。

年齢が若いほど縦向きで動画を視聴する傾向が強い。(出典元:https://videocloud.jp/topics/3792/

「ショート動画」ジャンルの確立

さらに、縦のショート動画の支持を一気に広げたTikTokのおかげで「ショート動画」というジャンルが確立されたことも重要な要素。上下スワイプですぐ次のコンテンツに移動できる遷移方法やBGMの活用などのUIUXは、他のSNSにも多大な影響を与えています。これも、ショート動画の流通量増加に大きな力を発揮しているといえるのではないでしょうか。

「タイパ」重視傾向の加速

そして現在は、コロナ禍を経て誰もが「時間をどう使うべきか」をあらためて見直すタイミング。いわゆるデジタルネイティブ世代からZ世代、α世代は、特にその傾向が強いと感じています。

「時間のムダ」と判断されたコンテンツはすぐに捨てられてしまうので、じっくり時間をかけて見たり読んだりするようなタイパ(タイムパフォーマンス)の悪いコンテンツは受け入れられにくい傾向も。ドラマや映画を倍速で再生するといった「とにかく速く情報を取り込む」派の増加も話題になりましたよね。

年齢が若いほど「タイパ」を意識しながら生活している割合が高い傾向に。(出典元:Appliv TOPICS(アプリヴトピックス) https://mag.app-liv.jp/archive/139936/

ただ一方で、移動時間などのほんの数分のスキマ時間の活用方法としては、エンタメ性の高いショート動画が適しています。片時も離さずスマホを持ち歩く人が多いからこそ、そのスキマに手軽に見られるショート動画が入り込みやすかったのかもしれません。

コミュニケーション方法の変化

そして、LINEが普及した約10年前に比べて、オンラインでのコミュニケーション方法が変わってきた、と感じる方も多いのではないでしょうか?

若年層の中には、友人を飲みに誘うときなどにInstagramのストーリーズやリールといったオープンツールを使う方もいます。「既読」に縛られず、「YESかNOか」を明確に答えなくて済む、カジュアルでライトなコミュニケーションを好む方も増えているのです。こうした感情や行動原理にフィットしやすいのも、短尺の動画の特徴といえそうですね。

「個人が活躍できる」時代の到来

子どもが将来なりたい職業ランキングにランクインするほどの地位を確立したYouTuberをはじめ、TikTokerやインスタグラマーなどの個人が活躍できるフィールドが広がっているという点も外せないポイント!「好きなことでお金が稼げる」という考えや「有名になりたい」との想いで、顔出しで発信する人も増えました。

また、こうした発信者を応援する「推し」文化の定着も、個の活躍の後押しに。ライブ配信や投げ銭のできるアプリでの文化形成も大きな要因となっています。「フォロー」という行為で気軽に人を応援できる文化が、さらに動画発信を加速させてきたのです。

03.成果につなげたい!企業のショート動画活用術って?

ショート動画や各SNSを活用しているのは、もちろん個人だけではありません!すでに積極的にショート動画を活用してTikTokやInstagram、YouTubeでの展開を進めている企業もたくさんいます。この章では、成功事例から得られるヒント、そして絶対外せない考え方をチェックしていきましょう!

成功事例に学ぶ、ショート動画づくりのヒント

評価を得ているショート動画にはいくつかパターンがあります。そのひとつが会社の裏側や制作秘話など、ユーザーが普段見ることができない部分を「ちょい見せ」するコンテンツ。これこそ、写真ではなく映像だから魅せやすい内容!「わざわざ見る価値」を生み出す「リアルさ」や「普段見られないプレミア感」は、抑えておきたい重要ポイントです。

また、「ムダ」「面白くない」と思われた瞬間に見切られるのがショート動画の怖いところ。冒頭の2秒でいかに惹きつけ「続きも見たい!」と思わせるかも、ショート動画づくりでの鉄板のコツです。

ショート動画が最も活躍する場は、SNSの外にある!?

ただ、今ショート動画の主戦場となっているSNSには、モノを買いに来ているユーザーはほとんどいません。だからユーザーは「販売や集客の目的で、企業が宣伝している」と感じ取った瞬間に、冷めて離脱してしまうんです。

つまりSNSで担えるのは、基本的に「見込み顧客を育成する」ところまで。「売る」ではなく、「認知してもらう」「仲良くなる」までを目的にしましょう。ここからさらに、ECサイトの会員登録や実店舗への誘導、商品購入などの行動に移してもらうために、実は「ショート動画のオウンド活用」が重要になってくるんです!

04.ショート動画の「効果的なオウンド活用例」とは?

では「ショート動画のオウンド活用」とは一体どのようなものなのでしょうか。アパレルのECサイトを例に、効果的な活用例を見ていきましょう!

商品のリアルを直感的に伝え、購入判断のヒントに

まずは、一般的なアパレルのECサイトの商品ページをイメージしてみてください。冒頭にいくつかの商品画像が並び、続いてテキストの商品説明が書かれていることが多いと思います。私たちはこうした情報をもとに商品を吟味し、購入に至っています。

もしこの冒頭に、「モデルが商品を着用しているショート動画」があったらどう感じますか?動きや生地感がわかりやすく、着たイメージが湧きやすいのではないでしょうか。画像とテキストを見るまでもなく、欲しいか否かの判断が直感的にしやすい。これがポイントです。適材適所ではありますが、ショート動画の方が写真やテキストよりも効率的に購買の後押しをしてくれるケースが多いのです。

アパレル商品ページ左下にショート動画を挿入している例。スカートの動きや生地感がわかりやすい(マガシークhttps://www.magaseek.com/product/detail/id_505121681-mc_004?pid=TIGLINE_LIVE230308_item01_main

「動的な内容・込み入った内容」をよりわかりやすく

また、商品の使い方や理想的な活用例といった「込み入った内容」を伝える場合もショート動画が活躍します。これはアパレルよりも、ガジェットやおもちゃといった製品の方が親和性が高いですが、テキストや画像よりもわかりやすくリアリティを持って伝えることが期待できますよ。

商品ページ左下にショート動画を挿入している例。イメージが湧きにくい商品でも、ショート動画なら直感的にその魅力や活用例が伝わる(プレミアムバンダイhttps://p-bandai.jp/item/item-1000192014/

次にバトンをつなぐ、「選択サポート」の役割も

実はショート動画は、商品ページに至る前段階でも真価を発揮するんです!

例えば商品ページに遷移する前に、「レディースのスカート」のカテゴリページを見ていたとしましょう。そのときにラインアップの一覧を動画で一気に見せれば、「次にどの商品の詳細を見るか」の判断をサポートすることができます。このように、次の階層への導線強化の側面でも、ショート動画はとても強い力を見せてくれるんです。

ただ、このときに忘れてはいけないのが「置き場所や用途の精査」をすること。例えばECのトップページに、相互に何の関連性もない動画が一気に並んでいたらどう感じるでしょうか。ユーザーは順を追って素早く情報を精査したいはずですが、これではノイズが多くなり混乱を招いてしまいます。一方、先ほどの「レディースのスカート」など、一定の軸で興味関心のあるものの動画が並んでいれば、ユーザーにとっては嬉しい機能として認識してもらえるでしょう。

このように、ターゲットの目線に立つことなく「ただ動画を置くだけ」では、真逆の効果を発揮してしまうという点には注意したいですね。

05.ここだけは抑えておきたい!企業が導入するときのポイント

マイルストーンを細かく!KPIを設定しよう

企業が導入を検討する際、はじめに重要になるのはKPIの設定です。「とりあえず動画を配信して……売上につなげることをKPIにしよう!」というのは避けたいところ。例えKGIが売上だったとしても、KPIはもっともっと手前に設定しましょう。

「何のために動画をつくるのか?」から逆算して設定することで、成長と成果を実感しやすくなりますよ。売上だけを見るのではなく、関連要因を細かく分析して細かなマイルストーンを置いていくイメージが大切です。

継続できる体制や仕組みをつくろう

また、SNSでもオウンドでも「継続して発信できるか」という視点は欠かせません!何かしら成果を求めるなら、発信し続けられる体制や仕組みづくりが必須です。

しかし長尺でも短尺でも、「動画」という時点である程度の負荷はかかってしまうのが実情。企業でショート動画を活用していく場合は特に、どこからどこまでを自社で完結し、どこからを外注するのかの判断も必要になります。映像クオリティを上げてブランドイメージの確立に重きを置くのか、あえてスマホで編集して親近感を醸成するのか……どこに着地点を置くかから考えてみましょう!

社内の人が表に出るメリットを活かそう

「外注するか、内製するか」の観点で議論になりがちなのは、「誰が出演者になるか」。コンプライアンスの観点で自社スタッフNGが出る場合もあると思いますが、私たちパロニムでは、その会社のスタッフさんが出演する方法がベストだと考えています。

視聴する側が知りたいのは、その商品と会社の裏側のストーリーや想い。「こういう考えで、こんなに愛を持ってつくっている」という、その人でなければ語れない部分を表に出せると、お客様とより濃い関係が築けると思います。

06.今後、ショート動画はどう変化していく?

質の良い動画や発信者だけが生き残っていく

これからは「整理と淘汰」の時代!特にSNSにおいては、まだ再生数至上主義ともいえる「再生される=お金がもらえる・注目される」という公式に従った、比較的内容の薄い動画が大半を占めています。

しかし、動画数も視聴者数ももっともっと増えていくであろうと考えると、ただトラフィックを増やすだけの動画は自然と淘汰されていくと思います。その結果、内容がより精査された質の高いコンテンツが増えていくのではないでしょうか。

活用方法がどんどん多様化していく

さらに、ショート動画のアイデアや活用方法もより多様化していくことも考えられます。現状、ショート動画に適した王道パターンはいくつも存在していますが、未開拓ゾーンはまだまだあるはず。その発掘過程で、新たなコミュニケーションチャネルが出てくる可能性もありますね。

その後のコンテンツに導く「入口」になっていく

さらに、ショート動画が「その後のコンテンツへの誘導ツールになる」という流れは今後強まっていくのではないかと考えられます。

15秒や30秒といったショート動画で伝えられることは、ほんの一部分だけ。だからこそ、その視聴を見てもっと知りたいと思った人が、長尺の動画や記事コンテンツに入っていったり、詳細の商品ページに進んでいったりというように、入口の役割を果たすようになるのではないでしょうか。ショート動画で興味関心を引き、2階層目、3階層目へとどんどん誘導していく階層構造をつくる。この流れの中で、今後ショート動画の新たな市場が形成されていくと考えています。

あらためて綿引は、今後こうしたショート動画がビジネスの起爆剤になっていくと見ています。ショート動画そのものが利益を生むのではなく、ショート動画が利益を生むための入口となる。つまり、ブランドや会社の部分情報をキャッチし中に進んでいくかを決める、ある種の「店の門構え」になるのです。いかに人の心に響き、スムーズに気持ちの変化や行動を生む出せるものにしていけるか。これが、これからのビジネスを大きく左右していくはずです。

パロニム株式会社では、ショート動画を企業のマーケティングやプロモーションに有効活用できるサービス「Tig Creator」をリリースしました。まさにオウンド活用に適したアプリですので、まずは一度詳細をのぞいてみてください!

縦型ショート動画を指でなぞってインタラクティブ動画を作成

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