近年、スポーツや芸術などの分野において「ボリュメトリックビデオ(Volumetric Video)」と呼ばれる、3D映像を作る新たな技術が活用され始めています。
本記事では、
- ボリュメトリックビデオの具体的な仕組み
- ボリュメトリックビデオの活用メリット
- ボリュメトリックビデオの活用事例
について解説します。
INDEX
ボリュメトリックビデオとは

ボリュメトリックビデオとは、人物・位置・ポーズなどを3Dデータ化して自由自在な視点の映像を生成できる技術のことです。通常ではかなりの時間と労力が必要な3D映像も、ボリュメトリックビデオを活用することで素早く生成できます。
そして、360度全方位の撮影ができるボリュメトリックビデオは、「仮想現実(VR)」や「拡張現実(AR)」のコンテンツと相性が良く、3D空間での視聴の自由度をより高められます。
- 「仮想現実」:コンピュータ技術を用いて作り上げられた仮想世界をまるで現実世界のように体験させるシステムのこと
- 「拡張現実」:現実の風景に仮想空間を表示することで目の前の視覚を仮想的に拡張するシステムのこと
ボリュメトリックビデオは、さまざまな方向や距離の映像を数多く用意しなくても、ひとつの映像からそれぞれにあった空間を自由に切り出せます。そのため、映像をより細かく編集することが多い分野で特に注目されている技術です。後ほど活用事例も紹介しますが、スポーツやファッションの分野などでは、すでにボリュメトリックビデオを駆使した取り組みが始まっています。
▼ボリュメトリックビデオと相性が良い分野の一例
- スポーツ
- 芸能・エンターテインメント
- ファッション
- 教育
- 不動産・建築
ボリュメトリックビデオの仕組み

ボリュメトリックビデオは数台から数百台近いカメラで被写体を撮影し、人物・位置・ポーズなどを三次元データ化することで、自由な視点の映像を生成する仕組みです。
通常、撮影時は高解像度カメラや高機能センサーが用いられるため、立体的な映像情報や色・明るさを正確に取得できます。そして、カメラやセンサーを用いて撮影された映像をポイントクラウド化・メッシュ化し、CG技術と組み合わせることで立体映像が完成します。ポイントクラウドとは、3次元における点の集合体のことです。この点の集合体が積み上がることで3D映像が生成されます。また、メッシュとは頂点・辺・面の集合体のことで、それぞれの点が頂点となり、辺や面によってつながることで3D映像が生成されます。
このボリュメトリックビデオの仕組みで生成された3D映像は、通常の2D映像とは異なり、奥行きや立体感を再現できることが大きな特徴です。
▼ボリュメトリックビデオで3D映像を生成する主な流れ
- 数台から数百台近いカメラで被写体をさまざまな角度から撮影する
- 被写体以外のブロックを削り取ることで被写体を3Dデータ化する
- 背景と被写体の3Dデータを合成する
ボリュメトリックビデオを活用する3つのメリット

ボリュメトリックビデオを活用するメリットは、主に次の3つです。
- 複数台の固定カメラで撮影した3D映像ひとつから編集ができる
- 360度全方位の映像を生成できる
- 3D空間で自由度の高い視聴体験を提供できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【メリット1】複数台の固定カメラで撮影した3D映像ひとつから編集ができる
ボリュメトリックビデオは、従来の複雑なカメラワークがなくても複数台の固定カメラで撮影した3D映像ひとつから編集ができます。さらに、現場ですぐに3D映像を確認できることから、映像の編集がその場でおこなえることも魅力的です。1回きりの取材などで撮影の撮り直しができない場合でも、すべてのアングルの映像が記録されているため後から簡単に修正できます。
【メリット2】360度全方位の映像を生成できる
ボリュメトリックビデオは、通常のカメラワークでは撮影できないような視点からの映像生成が可能です。そのため、360度全方位視点を活かした臨場感あふれるライブ映像や、商品の魅力を伝えるPR映像などの制作に適しています。360度全方位視点の最大の特徴は、上空だけではなく通常のカメラでは不可能な地下から見上げる映像も簡単に生成できることです。通常のビデオでは実現できない角度からの映像で、今までの映像の常識を覆す表現を可能にします。
【メリット3】3D空間で自由度の高い視聴体験を提供できる
ボリュメトリックビデオは、大量のカメラでいくつもの角度から被写体を撮影します。そして、撮影した大量のデータを情報収集することで、自由視点映像を生成できます。
この自由視点映像を用いることで、
- スポーツ中継で選手と同じ目線からプレーを観戦できる
- 仮想現実世界で今までより自由な視点で周囲を見渡せる
など、3D空間で自由度の高い視聴体験を実現できます。
ボリュメトリックビデオの活用事例3選

ここで、ボリュメトリックビデオの活用事例を3つ紹介します。
- 伝統芸能「能楽」
- プロ野球「DRAMATIC BASEBALL 2022」
- ファッション「JUN ASHIDA AUTUMN WINTER COLLECTION 2022-2023」
ボリュメトリックビデオならではの映像を紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。
【事例1】伝統芸能「能楽」
この能楽の動画は、ボリュメトリックビデオの360度全方位映像とCG映像を組み合わせることで、臨場感のある舞台シーンに仕上がっています。当日は360度グリーンバックで撮影され、演者の演奏後すぐに3Dデータ化されました。
完成後の動画では、突然和楽器を演奏する演者が出現し、そのあと床がペラペラとめくり上がっていく神秘的なシーンも確認できます。また、地下から見上げる映像が生成できているのも、まさにボリュメトリックビデオならではの技術といえます。
【事例2】プロ野球「DRAMATIC BASEBALL 2022」
2つ目は、プロ野球中継の映像にボリュメトリックビデオが活用された事例です。選手(バッターやピッチャーなど)を3Dで再現することにより、視聴者も選手と同じような目線でプレーを楽しめる映像になっています。
- 走っているランナーと正面から並走する映像
- ピッチャーが投げたボールを後ろから追いかける映像
- キャッチャー目線での変化球の映像
など、通常では見られないさまざまなアングルの映像を確認できます。
【事例3】ファッション「JUN ASHIDA AUTUMN WINTER COLLECTION 2022-2023」
ボリュメトリックビデオは、ファッション分野でも注目されている技術です。ファッションアイテムを360度全方位での視点から見られるようにすることで、視聴者に商品の特徴や雰囲気がより詳しく伝わる映像になっています。
通常のネットショッピングでは、平面の画像でしか商品を見られません。一方で、ボリュメトリックビデオを使うと自由な3D映像により、さまざまな角度からファッションアイテムの特徴や優れた点をアピールできます。ボリュメトリックビデオがファッション分野に普及することで、購買ユーザーのイメージのズレを少なくできる可能性があります。
まとめ:ボリュメトリックビデオは革新的な映像技術

ボリュメトリックビデオは、音楽・ファッション・スポーツなどあらゆる分野で注目されている革新的な映像技術です。人物・位置・ポーズなどの空間全体を3Dデータ化することで、自由自在な視点の映像を生成できます。また、ボリュメトリックビデオは、3D空間データを活用した「仮想現実(VR)」や「拡張現実(AR)」のコンテンツと相性が良く、重宝されています。これは「臨場感・迫力」といった演出に凝ったものだけでなく「ディテール」をより正確に伝えるという観点からも非常に有用な技術です。
今後、あらゆるシーンでの活躍が期待されるボリュメトリックビデオに注目してみてはいかがでしょうか。動画マーケティングの観点からも期待が高まる技術なのは間違いありません。動画マーケティングに関しては、下記記事で詳しく解説していますのでチェックしてみてください。
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